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先日の日曜日、お友達と一緒に 『 ダイアログ・イン・ザ・ダーク 』 という、
暗闇を体験するイベントに参加してきました。

1988年にドイツで生まれたこのイベントは、世界全体で800万人以上が体験し
1999年以来毎年開催されている日本でも、約19万人が参加したのだそうです。
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参加者は6人が一組になって、暗闇のエキスパートである視覚障害者の方の案内で
積水ハウスのショールーム内に設けられた家の中に入ります。

自分の顔の前に手の平をヒラヒラさせても見えないほどの闇の中で
お互いに声を掛け合って助け合いながら、目ではなく
手触りや足触り、音、匂い、空気の揺らめきなどで家の中の様子を知るというものです。

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簡単な説明を受け、まずは荷物を全部ロッカーに預けるところから始まりました。
落としても暗くて拾えないし、接触して誰かを傷つけたりしないように
時計やアクセサリーなどもすべて外すように言われます。

穏やかな雰囲気の女性アテンドさんと一緒に段階を追って少しずつ暗い部屋に移り、
途中で白杖が配られて、3つの注意点を教えてもらいました。
どれも、自分や他人がケガをしないための大切な予防措置でした。

①  持ち手の紐は、何か用事をする時以外は手首に通したりしないこと
→ 電車のドアなどに挟まれて、杖ごと転倒したりしないため

②  誤って倒してしまった杖を拾う時は、まっすぐ下にしゃがみ
その動作は、声を出して周りに知らせること
→ 前屈みになって何かに頭をぶつけたりしないため

③ 手探りをする時は、手の平ではなく手の甲を使うこと
   → 突き指をしたり、同行者の誰かを傷つけたりしないため

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いよいよ真っ暗な入口に立って、これからお家の中に入るという時
アテンドさんから、お互いのニックネームを決めましょうという提案がありました。
暗闇の中で黙っていては危険なので、自分のいる位置や行動を周りに知ってもらうため
何をする時にも 「 ○○ちゃん、××をします 」 と声に出すようにということでした。

ユキちゃん、ナオちゃん、チエちゃん、キミちゃん、
リカちゃん、(ユキちゃんという名前がもう1人いたので2人目は)ユキ姐ですと
それぞれが名乗りました。
女性ばかりなのは最初に集まった時に分かっていましたが
小学生以上の男女が参加できるイベントなので
これだけ成人女性ばかりのグループになるのは珍しいそうです。

アテンドさんに連れられて、この6人でお家の中に入り
中で待っていて下さった男性アテンドさんにもお手伝いしてもらって
( 敢えて、あまり詳しくは書かないでおきますが )
お家の中やお庭で、色々なことをして過ごしました。

見えないということは、1歩を踏み出すことさえ怖いのですが
「 左手に2段の段差がありますから気を付けて 」 とか、 「 キミちゃんの横が空いています 」 とか
お互いに声を掛け合っていく内に、最初にはなかった親密感が生まれ
私たちはすぐに、キャアキャアとおしゃべりの絶えない大変にぎやかな仲良しグループになりました。

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70分のプログラムは、あっという間に終わってしまい
折角仲良くなったみんなとお別れするのが名残惜しいほどで
どこから来たの?と訊き合ったり、参加するのはこれが4回目という強者に驚いたり
アンケートを書きながらも、まだ私たちはおしゃべりを続けたのでした。

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お家の中で色々なクッションの中からお気に入りの1つを選び
それを抱いておしゃべりする時間があったのですが、アンケートを書き終えると
「 そのクッションと同じ物が、広いショールームの中のどこかにありますよ 」 と言われたので
覚えていた形と手触りだけを頼りに、それを探してみました。

少しザラザラした手触りだった私のクッションは、オフホワイトだと勝手に思い込んでいたのに
実際の物は、マルチカラーのストライプで驚きました。

 「 見る 」 という行為は、目でしかできないと思っていましたが
靴を脱いで歩いた床の感触、お菓子の甘い匂いや舌触り、テラスで感じた頬をなでる風など
視覚以外の感覚をフルに使って 「 見る 」 方法もあるのだということを知りました。

そして、人とコミュニケーションを取るというのは
こんなにも温かな気持ちにさせてくれるのだということが、よく分かりました。

暗闇以上に、濃い時間でした。

『西嬉 HP』 http://www.nishiki.ecweb.jp/